August 03, 2014

Blu-ray 機動戦士ガンダムUC episode7「虹の彼方に」その3

モビルスーツを中心とした感想をここで書いた「機動戦士ガンダムUC episode7 虹の彼方に」。ストーリー面の気になる点というか‘み’なりの解釈を纏めておきます。

もっとも‘み’は先に小説を読んでいるので、その印象や感想と混ざってしまったりしている部分はあるかも知れませんがご容赦下さい。

全体的な印象としては勿論良い作品だと思いますし、数年間続いたガンダム作品としても、アニメのクオリティ的にも不満はなく、良くコレだけのものをマスベースに乗せてくれたなというのが本音。

ただ、その前提でもやはり気になるのは尺。

あと1作2作伸ばしてでもしっかりと描いて欲しかったなと思える部分が多く、どうにもその辺が消化不良かなと。

と、ここからはポイントを絞りますが・・・

・マリーダの死

小説どおりにリディのバンシィに撃たれるんですが、小説ではリディがネェル・アーガマを撃とうとしてこれを庇った結果。ちゃんと意味があるというか意図があっての行動なんですが、ep7では単に撃たれているので必然性が薄いというかなんというか・・・ちょっと軽くなってしまったかなと。

・アンジェロの自傷

サイコ・ジャマーを破られたアンジェロがバナージと意識を交感（この表現で良いのかは分かりませんが）した後、ローゼン・ズールのコックピットを自らのクローで攻撃するんですが・・・
この意識交感の場面が小説とは全く違って軽くなってしまっているんですよね。これはマリーダにも共通するんですが、慰み者にされていた時代の描写は非常に薄いのでここは描きにくかったんだとは思いますが、やっぱりep7の映像だけだと理解に苦しむなぁと。
そういえばクライマックスでリディがバナージを連れ戻すシーンも「オードリーを寝取っちまうぞ！！」か「オードリーを取っちまうぞ！！」になっていたので、そっち系の描写は削除ってことなんでしょうね(^_^;)

・アムロとシャアとララアとフロンタル

小説では一切（厳密に言えばラー・カイラムの艦長室にアムロの写真が飾ってあったくらい）登場しなかったこの3人。意識体のような形ではあったもののしっかりと登場。賛否両論あるようですが、虹の向こう側の住人んになっていると考えた方が良いようです。ララアはファーストで大佐を庇ってアムロのビームサーベルに貫かれた時、アムロとシャアは3年前のアクシズショックの時に真のニュータイプになったと思うのが自然でしょうが・・・　3人共に肉体を失って意識体として地球圏を見守っているということなんでしょうかね。
　「潮時か」
　「もう良いのか」
　「大佐が大佐だった頃の思いは十分伝わった」
なんていう発言を踏まえると、そう考えるのが自然かなと。

バナージのなりかかった神のような存在といい、まさに2001年宇宙の旅・・・ですね。特に「大佐が大佐だった頃」という言い回しは既にシャアが人間という存在でなくなっていることを示唆しているはずなので、どこかでこの3人（少なくとも2人）が人間として生きていて意識だけが表れているとは考え難いなと。
まあ、真のニュータイプが全能の神のような存在であれば幾らでも復活出来ちゃうでしょうが(^_^;)

そう考えると、フロンタルって・・・

小説では「シャアに似せて作られた強化人間」。ということで良かったと思いますが（シャアそのものの意識や思惟が入っていた描写もあったはずですが）、ep7では明らかにシャアの意識や残留思念が入り込んでいた形になっていたので、人の総意の器というよりはシャアの残留思念の一部（悪い側）を具現化する人形的な立ち位置になるんでしょうかね。
ん、でもそうするとこのフロンタルの肉体って・・・どこで誰が作ったんでしょうか？　アニメでは風の会どころかジオン共和国すらほぼ登場しないので・・・

・ネオ・ジオングとシナンジュの崩壊

サイコシェードの話は前のエントリで書きましたが、このMAというかMSが倒されるシーン。ユニコーンの掌から人の心が持つ暖かさ伝えられて朽ち果てるような描写になっているんですが・・・

ちょっとここは理解し難いなと。

小説版でシナンジュが倒される時はシロッコのジオのそれに近い描写だったと思いますが、戦闘シーン全般は逆襲のシャアのオマージュ的な要素が強かったと思います。小説ではここまで逆襲のシャアは意識しませんでしたが、武器を失ったユニコーンが素手でネオ・ジオングを追い詰める様はもうそっくりですし、暖かさの話もアムロとシャアが語っていたキーワード。劇中で何度も使われる「それでも」を具現化している戦闘なのでここまでは分かり易いんですが・・・

直前でフロンタルは時（刻？）の行き着く先の虚無をバナージに見せていて、バナージは「それでも」と人の暖かさをフロンタルに感じさせる。
当然虚無以外の未来に対する可能性もあるでしょうし、これを理解したのか汲み取ったのか・・・　シャアの意識がフロンタルを離れ、ネオ・ジオングとシナンジュが朽ち果てていく。
‘み’は初見時にはこの虚無に至るまでのタイムスリップが物理的に作用した文字通りの経年劣化だと思っていたんですが、どうもシャアの意識が抜けたことによって支えるものが消失して崩壊したということなのかなと思えてきたんですよね。そうなるとそもそもネオ・ジオングのラスボス的な力や存在も、実態があるものではなくそう見せていただけなんじゃないかなと。
真のニュータイプはバナージ＆ユニコーンが意識だけでゼネラルレビルのMS隊を無力化したり出来てしまうものなので、ネオ・ジオングという圧倒的な存在を見せることで「それでも」が本当に価値のあるものなのかを試していたんでしょうか。

う～ん、考えすぎですかねぇ

・父と子

物語の終盤で一気に強調されたように思えた父と子の話。
実際には「ユニコーンの日」から脈々と引っ張られているんですが、バナージとカーディアス、リディとローナンの関係はリディの「父親はいつも一言足りない。」でオールOKのようになっていましたし、世代を重ねていく中でのニュータイプへの進化（というより突然変異的なもの）の到達点という発想からすれば父から子への世代の流れが綺麗にマッチしていてUCとしては良い様な気もします。まあ、アニメではそこまで強く「進化」や「世代」は意識されていませんでしたが・・・

この流れで気になるのはブライトとハサウェイ。

グスタフ・カールも登場していましたし、家族を脅迫材料に使われながらも「誇れる父でありたい」と毅然としたブライト。自らの手でリディを撃ってしまうことになったローナンの狼狽振りとは見事な対比になっていましたが、こうなるとなおさら数年後に自らの手でマフティ・ナビーユ・エリンを処刑した（ことにされてしまう）のをどうしても意識せざるを得ませんでした。どこまで意識して描かれたのかは分かりませんが、切ないというかなんというか・・・
ちょっと映像向きではないのかも知れませんが、閃光のハサウェイもアニメ化とかしてくれないですかねぇ

・真のニュータイプから人間へ

バナージ＆ユニコーンが真のニュータイプになった（厳密にはその戸口に立ったということいになるようですが）場面。小説版どおりリディが引き戻しに掛かるんですが・・・　上記の「寝取っちまうぞ」はともかく、ここの描写が非常に甘かったというか少なかったのが残念。
小説はコロニーレーザーを防いだ直後、何が起きているのか分からずに非常にもどかしく思いながら読み進めたんですが・・・　ep7ではサイコフレームが水晶のように結晶してはみ出している様が（映像なので当たり前ですが）良く分かったので、バナージとユニコーンが一体化して別の存在になり掛かっていたのが逆に分かり難かったように思えるんですよね。リディが何故連れ戻そうとするのかとかもep7だけではピンと来ないんじゃないかなぁと。
しかも小説ではこの存在は「まだ時間はある」と感じて自らの進化を先送りして元のバナージとユニコーンに戻っているんですが、その表現もなくミネバの呼びかけに対してカーディアスに促されて戻るような表現になっていたので、ニュアンスが結構違ったんですよね。

ただ、この場面でのヒーローは間違いなくリディ。

バナージがep5でオードリーを受け止めるために自らの意思で「出来るよな、ユニコーン！」とNT-Dを起動する‘み’の大好きな場面があるんですが、リディも紆余曲折を経て同じ場面に遭遇。相手こそミネバではありませんが、これまで起動するのに必死だったNT-Dを「バンシィ！」とあっさり起動。相手はこれまでの際立った性能のモビルスーツとニュータイプではなく神になりかかった存在なので如何にNT-Dとは言え全く追いついていませんでしたが、自らの意思でNT-Dを起動して全力で可能性に掛けた人間臭いリディ。良いシーンですねぇ
まあ、ここが無かったらリディの印象って随分悪いままになってしまったような気がしますし、「ヴァァナァァァァァジィィィ！！！」があってこそのこの台詞なんですけどね。
あ、バナージの「ユニコーーーーーン！」は合体ロボを呼んでいる様にしか聞こえませんでしたけど(^_^;)

・エンディング

物語のクロージングは小説どおりにメガラニカも守られてミネバの演説も行われ、これが遍く地球圏に伝えられて大団円という形ですが、その中で目に付いたのがこれまでのガンダム作品で登場した場所が幾つか描かれていたこと。
カミーユとファが短い時間を共有した香港シティのビルの屋上や、アムロとララアが出合ったサイド6のログハウス？など・・・　La+プログラムが戦争の痕を巡らせたのに対し、人々がいた場所を巡る形になっていたのが非常に良かったなと。しかもそこで主要な登場人物は出て来ない（カイとベルトーチカ程度だったかと）ので、それがまた妙に思わせぶりですしね。
あ、桟橋のようなところはZZのラストでセイラとリィナがいたあの場所だったのかなぁ

そしてそこで掛かるテーマソングがAimerの「StarRingChild」・・・大分エントリも長くなってしまったのでこれは別に紹介します。

現実に宇宙世紀はこの後もマフティー動乱、クロスボーンバンガードの勃興、ザンスカール戦争と戦乱が続いてしまうことにはなっていますが、まずはこのユニコーンとしては大団円。

また時間を作ってep1から見直しましょうかねぇ